題名:ドイツ的ほめられかた

名前:クルニッグ・アルフォンスさん 12歳 

国名:ドイツ

   中学生になって初めての夏休み。去年までとは違う僕をアピールするために学習計画を立てた。読書、漢字、数学、フルートの練習等々。そして体を動かす事が大好きな僕は、計画表の余白をうめるために腕立伏、腹筋、背筋各50回、縄飛び1000回を加えた。それを見た母は、「立派な計画表ね。」と疑いの眼差しと共にさりげなく一言いった。立派かどうかは夏休みが終ってから判断して欲しかったが、その言葉が僕の右脳を大いに刺激した。計画表にはチェックの印がきれいに並んだ。
 縄飛びは玄関前のアプローチにヒュッ、ヒュッとスナップをきかせた軽快な音が響いた。数日後、階下に住むフラウ・ホフマンが生ゴミを片手に玄関に現れた。僕は熱い視線を全身に感じた。1000回飛び終えると、すかさず彼女が「何回やったの?」と聞いてきた。僕は期待通りの質問に胸を張って「1000回」と答えた。彼女は一瞬驚き、「スゴイ!もう世界チャンピオンになれるね。」と今度は微笑みながら言った。なんて大げさな言葉だ。僕は頭がクラクラした。どんな言葉を返すべきか、僕の頭の回路があちこち走り回ったが、日本人が一番得意とする笑って応えるという最も安直な選択をしてしまった。心の中では「そりゃそうさ!」と言いたい程うれしかったのだが、恥ずかしくて何も言えない自分がいた。後悔が広がった。日本人なら「すごいね!」が精々だし、この程度では世界チャンピオンになれるはずがないので、こういう言葉はまず口には出さないだろう。
 しかし、この大げさな『ほめ言葉』が嫌味に感じなかったのは何故だろうか。それは『ほめる』という事が、ここでは頑張っている人に対する最高のごほう美の言葉なのではないだろうか。これからはそんな言葉に出合った時、素直に自分の気持ちを言葉で返すようにしようと思う。人の心を和ませる大げさで楽しい『ほめ言葉』を、今度は僕が皆に言ってあげるつもりだ。




題名:自分を信じて

名前:濱田真由美さん 11歳

国名:イギリス
   指き者の指示に従って、みんないっせいに楽器を上げた。一しゅんのちんもく。しんぞうの音が聞こえてくるようだ。チェロ、ヴィオラ、ヴァイオリン、みんなが1つになってロジーニの「ウィリアム・テル」のえんそうを始めた。最初は曲が完成するとは思えなかったから、えんそうしながら夢の中にいるみたいだ。
 今回のホリデーオーケストラで、私はあるきょうだいと仲良くなった。タイワンからイギリスへ来てまだ1カ月のアニーとイーグルだ。アニーは英語が少し分かるけれど、弟のイーグルは何も分からないということだった。私はアニーとリハーサルの合間に英語でおしゃべりをした。 おしゃべりをしていて、私は3年前イギリスに来たばかりの自分を思い出した。何も分からない英語と戦ってきた私、学校の先生の話がわからなくてくじけそうになった私を思い出した。きっとアニーとイーグルも、その苦しみにこれから立ち向かっていくのだと思うと、私は少しでも助けてあげたいという気持ちになった。リハーサルの間私はなるべく近くにいて、先生が言われたことをゆっくりと説明してあげた。時々、私が言いたいことを分かってくれないときもあって、少し心配になったりした。
 とちゅうで私は、アニーとイーグルが言葉がわからなくても、他の人と一緒にすらすらとヴァイオリンをひいているのに気がついた。その時、私は思った。英語がわかることは確かに大事なことだけど、自分に自信を持つことの方がもっと大切なんだ。アニ―とイーグルは英語がわからなくても、そんなことにくよくよせず、自信を持ってヴァイオリンをひいていた。そう気付いてから、私はアニーとイーグルが今までとちがう2人になったように思った。
 鳴り止まないはく手の中、指き者の合図で、私たちは皆立ち上がった。私の体がふわっと軽くなったように思えた。アニーとイーグルのほこらしい横顔が見えた。

 



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