題名:チャオ・ベッラ(やあ、別嬪さん)

名前:DEL(デル) GROSSO(グロッソ) 秀子さん

国名:イタリア
インタビュー

   「チャオ!ベッラ(やあ、別嬪さん)今日は何を?」近くの八百屋の主人は買物客で混み合っていても笑顔を絶やすことがない。初めて店に入った時のことだ。チャオ・ベッラと声をかけられた。私は思わず後を振り返った。自分の後に誰か素敵な美人でも入って来たのではないかと思ったのだ。勿論誰もいない。言葉の意味を理解し、自分に対しての挨拶とわかった時に私は年甲斐もなく頬を染めた。顔を赤くすることなど暫くなかったことだ。客に対してのお世辞とわかっていても悪い気はしない。このひと言で緊張から解放され買物は素敵な洋服でも選ぶかのような楽しいものとなった。店を出ようとするとセロリとバジリコ、プレゼモロを無雑作につかみ袋の中に押し込んでくれた。帰り際も「ボンジォルノ、ありがとう、よい一日を!」外に出て海に沿った道を歩きながら、袋の中に押しこまれていたバジリコを取り出し、一本一本丁寧に揃え花束のように手に持ち、香りを嗅ぎ思わず笑いがこみ上げて来た。  
   ある日のことベランダで植木鉢に水をやっていると四〜五人の子供たちが自転車をとめ「日本人?ローマの中田知ってる?昨夜の中田は良かったね」と声をかけて来た。人なつっこい笑顔に囲まれて、急いで台所に戻り、アイスクリームをふるまった。  
   つい数年前まで東京の中・高校で英語教師の端くれとして教育に携わって来たが、最近では校内で擦れ違っても会釈どころかそっぽをむかれることが多くなった。授業そっちのけで挨拶の大切さを説いたことを思い出してしまった。ここでは道ですれちがっても外国人の私に視線を合わせほほえんでくれる。  
   三十年以上も前に知り合った主人と還暦をむかえて結婚。まだ二〜三年しか住んでいないのにこの街の人々との何げないふれあいが母国への望郷の念をやわらげてくれる。「チャオ・ベッラ」何とすばらしい響きなんだろう。さあ紅をさし、この言葉を聞きに出掛けよう。
 



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