「○○通りを知っていますか。」
まだドイツに来て日が浅かった頃、突然道をきかれて私はドキドキした。何とかドイツ語で分らない、と答え再び歩きだしたが、見ると私に道を尋ねた人はすぐに地元の人にききにいっている。先にそっちにきいてくれればいいのに、とまだ心臓がバクバクしていた私は思わずつぶやいた。どう見ても東洋人の子供なのにと、とても不思議に思った。
あれから三年経つ。ドイツ語にもドイツ人にも慣れて、道をきかれても緊張しなくなった。外国の人とコミュニケーションを取るのを、面白いと感じる。
それなのにどこか、越えられない壁がある。
自分から異国の人に話しかける。実はこれは、結構勇気のいる事だ。私の場合、言葉が通じなければどうしよう、と必ず一瞬ためらってしまう。ジェスチャーか何かで、どうにかなることは分っているが、やはり少し怖い。
この壁をどうやったら崩せるのか。一つは、語学を頑張れば問題は無い。しかし、私はもっと簡単な方法をヨーロッパの人から教えてもらった。
それは、片言でも気にしない、という考え方をする事である。「コンニチハ。」しか知らなくても、ヨーロッパの人は話しかけてくれる。東洋人に道を尋ねてくれるのも、私達と自分を区別などしていないからだろう。かっこいい、と思わないだろうか。私は思う。かっこいいし、尊敬するし、何より嬉しい。国を越えてコミュニケーションをとろうとしてくれる。その相手の心が一番暖かい。
「大切なのは言語という手段じゃない、心なんだ!」この合言葉を胸に私は心の壁を壊したいと思う。心こそ、人が世界共通で持っている、何よりも素敵な言葉ではないだろうか。 |