第12回受賞者一覧

題名 笑顔の秘密
名前 菅沼 真澄
国名 イタリア
インタビュー
  「あなたの笑顔を見ているとこっちもつられて笑顔になるよ!どうしていつも笑顔でいられるの?」とイタリアの友人達からよく尋ねられる。考えてみれば、駐在当初は毎日が緊張の連続で笑うどころではなかった。初めての海外赴任、イタリア語が全く判らず、知り合いも無く、夫は新会社設立の仕事に追われ家庭を構っている時間は無かった。私は困った事があっても常に自分一人で解決しなければならず、不安な日々を送っていた。
  そんなある日、洗濯中にホースが蛇口から外れ、元に戻らなくなり洗面所が水浸しになった。自分ではどうする事も出来ず、問い合わせ先も分らなかった。とりあえず水道屋を探す事にし、状況を図に描き、辞書から使えそうな単語を探し、それを書いた紙を片手に近所の店を回った。街の様子も店の場所も具体的に何を買えば良いかも全く見当が付かなかったが、とにかく勇気を出して開いているお店を端から回ったが、見つける事は出来なかった。お店の人達は皆、困った顔をして私を見つめるだけで、皆には私が何を言いたいのかさえ分らない様子だった。翌日も朝から薄暗くなるまで歩き回ったが、必死に説明しても上手く伝わらなかった。“こんなに頑張っても水道の金具一つ買えない。これからこの街で生活していかなければならないのにどうしたらよいだろう”と路上で途方に暮れた。
  しかし、最後に入った店で「なあんだ、水が溢れてるのね」と手で噴水のようなジェスチャーをしながら店員が笑顔で私にホースと蛇口を閉める金具を出してくれた。この瞬間、必死になって歩き回った二日間の疲れが吹き飛び、文法も沢山の単語も関係なく、こんな風に簡単なジェスチャーと単語一つででも、いとも簡単に物事を伝えられるのだと実感し、眼から鱗が落ちる思いだった。帰り道、なんだか気持ちが楽になり、嬉しくて自然と笑顔になって歩いていたら、昨日尋ね回ったお店の人達が口々に「どうした?大丈夫?」と心配そうに声をかけてくれた。その日も何回もその通りを通ったのに、周囲を見る余裕が無かった私は皆が心配してくれていた事に気が付かなかったのだ。この出来事のお蔭で、私は近所中の商店街の人達と知り合いになれた。それ以後は困った事があると直ぐにお店の人達に相談するようになり、そこでイタリア語からイタリアの風俗や習慣まで教えてもらえた。毎日会話をする事が楽しみになった私のイタリア語は驚く程の勢いで上達した。 そして、今では親身になって相談にのってくれる友人もできた。明日を迎える事が楽しみになった私は笑顔で毎日を過ごせるようになった。友人達は「あなたの笑顔が好き」と言ってくれるが、私が笑顔でいられるのは、そんな友人達を含めた周囲の人達がいつも温かく私を見守ってくれているからなのだ。笑顔で話しかけられたら誰でも自然と笑顔を返し、笑顔に集まる。そんな笑顔の連鎖反応は、私が海外生活で見つけた大切な宝物だ。。

 

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