毎回思うことだが、子供達の発想の多様性に感心する。幼いときから自分の意見をいい、違いを受け止め、日本人であることを自覚して生きる姿に、日本の将来に明るさを見出すのは私だけではあるまい。違いを受け入れる社会と少しでも違うものを排除しようとする社会の差は大きい。国際人になりたいという前に、日本人としての自分のアイデンティティを自覚し、しっかりと確立していることが必須だと思うのだが、国際結婚も増えた今、ハーフならぬダブルや、日本を知らない日本人など、多様な生き方ゆえのルーツも見受けられる。それにも増して、真の国際人になるには何国人かなど意識しないことが大切、というマルチカルチャー・マルチ言語の頼もしい意見すらあるのだ(「意識しないことが大切」石田太呂)。
総じて女子は真面目で一途、男子は優しくて行動的、と感じた。言葉の壁やともだち作りに苦闘するのは外国生活の最初のハードルではあるが、感性豊かな子どもの目に映る文化やライフスタイルの相違は、日本の社会のあるべき姿を映し出す。障害者と共に生きる社会、お金では買えないライフスタイル、困った人に助けの手を差し延べる寛容さ、国で考えるのではなく個人の長所や短所を見つけましょうと諭す賢明さ。
子どもたちの独自の発見・貴重な体験が将来必ず大きな実を結ぶであろうことを期待したい。
今回、井藤萌歌さんの「わたしは、仲良しリレーの第一走者」を最優秀賞に選んだ。次々に仲良しになれるよう言葉をリレーしようという発想が素晴らしい。佳作に選んだお姉さんの井藤彩歌さんの作品では、すでに将来の仕事のビジョンが描かれていて、いずれ海外体験を開花させるであろうことを期待したい。
優秀賞に選んだ斉藤拓登君の「『共に生きる』とは」には、障害者の生き生きと楽しんでいる笑顔に、偏見を持っていた自分を反省する話だが、それだけにとどまらず、共に生きる社会の真の豊かさを理解した聡明さが頼もしい。もう一つの優秀賞、小宮りかさんの「伝えようとする大切さ」は、言葉そのものよりも伝えることの本質をよく捉えている。
異文化体験者が増えるということは日本が徐々にではあるが多様な生き方・価値観を認める方向に進むことを助けるのは間違いない。むしろこうした貴重な人材を日本の社会がうまく取り込んで、内側から国際化の推進力として活用することを期待している。
最優秀賞
●「わたしは、仲良しリレーの第一走者」
井藤 萌歌 8歳 (ドイツ)
何よりも言葉の壁を乗り越えて、言葉の持つ不思議な力に目覚めた描写が生き生きとしている。自分が体験した嬉しさをどんどん回りに伝えていきたいという躍動感に溢れた作品だ。「モルゲン」が「おはよう」だと気づく言葉の不思議さの大発見は、世界を一変させるほどだったに違いない。その喜びが伝わってくるようだ。
優秀賞
●「伝えようとする大切さ」
小宮 りか 12歳 (オランダ)
言葉を学ぶことの本質は、伝えることの大切さだ。黙っていては通じないが、必要ならばジェスチャーででも伝えようとする心が大切なのだ。オランダ語で話さないで英語で話そうよ、と声をかけてくれた友達。その心が人と人とをつなぐのだ。友達のありがたさ、仲間になれたうれしさ、一緒に学ぶ楽しさこそが得がたい経験なのだ。何のために学ぶのか、誰のために使うのか、そして何を伝えるのか? しっかり見据えてこれからの人生の指針にして欲しい。
●「『共に生きる』とは」
斎藤 拓登 14歳 (オランダ)
自分の中にある偏見に気づくのは容易いことではない。普段は見てみぬふりをするものだ。しかし、気づいたときに広がる世界は素晴らしい。人生の選択肢も他を受容する寛大さも広がるからだ。偏見を無くすにはどうすればいいのか。やがてこの課題にも向き合うことになるだろう。自分に何が出来るのかも問題だ。しかし、そうしたことのすべてがこの「共に生きる」という命題から出てくる。健闘を祈りたい。
【深田祐介氏 プロフィール】
ふかだ・ゆうすけ 一九三一年 東京生まれ。
日本航空に勤務のかたわら執筆活動を始める。82年「炎熱商人」で直木賞を受賞したのを機に、作家として独立。「文学界」新人賞、大宅壮一ノンフィクション賞、文芸春秋読者賞、04年11月にはPHP研究所より山本七平賞特別賞受賞。企業小説や海外経験を生かしたルポルタージュなど著書多数。
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