海外旅行は好きです。異文化に触れることによって、自分を知ることが出来るから。ただし、海外生活はまだ未経験なので、あくまでも旅行者としての視点しか持っていないことを残念に思っています。今回の、海外で生活している方々の描く世界を審査するにあたり、「海外で生活すること」で見えた「世界」ならではの表現を見たいと願いました。
「小学生の部」、「中学生の部」、そして「一般の部」と3つのカテゴリーへは136点の作品応募があり、その総てからは各々の国の文化の違いや、応募された方々の置かれた様々なシチュエーション、また期待や不安、寂しさや喜びといった感情表現を見ることが出来ました。「海外で生活している」からこそ、日本への郷愁を感じている方々がいたり、自分の暮らす街の魅力を伝えてくれる作品、そして日常を共に過ごす友人や知人の紹介、また繰り返し眺めている何の変哲もない風景の愛しさ、学生生活の報告など様々な視点は、旅行者には獲得出来ない質の違いを教えてくれました。
136点の応募作品からは、136通りの個性を発見出来たのですが、今回はコンクールということなので、より一層個人的な発言力の強かった作品を受賞作品として選びました。
最優秀賞一般の部は、杉本直美さんの「5時 Dog yard」。午前5時の光の表現が素晴らしい。実感があります。中学生の部は、野尻裕紀さんの「バイエルン・初夏の食卓」、美味しそうな色使いは、バイエルンのこの空気を運んでくれます。そして小学生の部、佐藤サラ圭さんの「金髪、茶髪、黒髪、みんな友達になった!」。言葉の不安などを吹き飛ばしてくれる、心の交流の誕生に幸福感を感じました。各々の作品についての感想は別に書こうと思いますので、残念ながら賞にもれた作品で、気に入った作品を最後に列記したいと思います。小学生の部、小林舜さん、街の人々の多様さを伝えてくれました。吉川実さん、アムステルダムの水の世界の美しさが色鉛筆の表現とマッチしていました。松尾桃佳さん、デュッセルドルフの森の空気が伝わります。小谷野彰人さん、ロッテルダムには風車がたくさんあるのですね。とても誇らしげに描かれていて嬉しくなりました。中学生の部、鎌田夏実さん、ローマでは恐い犯罪もあるのですね。街の多様な顔が見えてきました。一般の部、コードル美枝さん、ユミコ・イトゥライン・ハツダさん、古澤純子さん、いずれも街の美しさを伝えて下さってありがとう。とても完成度の高い作品でした。石田苗子さん、異国での学生生活の不安や寂しさを乗り越えるだけの期待感も表現出来ていたと思います。小松崎真紀さん、アムステルダムの冬の冷たさを感じました。
以上、感想を書きましたが、応募して下さった皆さんの作品ひとつひとつと、このようなカタチで会話が出来た喜びを伝えたいと思いました。どうか、お元気で国際交流を続けられますように。ご応募ありがとうございました。
最優秀賞
●一般の部/「5時 Dog yard」
杉本 直美(ハンガリー)
タイトルを読んで、なる程と思いました。午前5時という時間に起きるドラマを描けるのは生活者ならではの視点があるからですね。近所の方々の様子や、犬の嬉しそうな表情。そして何よりも、朝の光が感じられます。ブダペストは、私も大好きな街ですが、歴史のある街の中で、この朝の風景が繰り返されていたことを想像すると、清々した気持ちになれます。色調、構成も素晴らしいですが、人物や犬のチャーミングな表現に、あふれる愛情を感じました。
●中学生の部/「バイエルン・初夏の食卓」
野尻 裕紀 12歳 (ドイツ)
水彩の色の美しさに目を見張りました。「おいしそう」です。パンの色も、ハムの色も、アスパラガスもそしてそのソースも、いい匂いがしてきます。ゆで卵、じゃがいもの上にかかったパセリも味が想像出来ました。この調子で、毎日の食卓を描き続けて下さると、楽しい食の日記、ドイツ編が誕生しますよね。食も立派な文化を伝えてくれるテーマです。
●小学生の部/「金髪、茶髪、黒髪、みんな友達になった!」
佐藤 サラ 圭 8歳 (イタリア)
まず、とても色が美しい。その色調が小学校での生活の楽しさを伝えてくれます。また様々な友人の個性を観察している点に佐藤さんの、描く喜びを感じることが出来ました。友人達の名前を書き込むことによって、イタリアの音が響いてきます。前方に大きく自画像を描き入れることによって、コミュニケーションの楽しさも表現出来たと思います。素直さに好感を持ちました。
優秀賞
●一般の部/「北ドイツの青空市場」
美智世 クロッゲル(ドイツ)
私は旅に出ると必ず街の市場に出掛けます。その街の日常を一番感じることが出来るからです。この絵に描かれている女性はなんと生き生きとしていることでしょう。果物もみずみずしく、空気がカラリとしていて、とても北ドイツだとは思えませんが、きっと、こんな素晴らしい日常があるのですね。クロッゲルさんの楽しい生活が伝わってきました。色がとても美しいです。
●一般の部/「IN BERLIN」
岡 めぐみ(ドイツ)
はじけるようなエネルギーが感じられて、思わず笑みがこぼれました。色も美しく、若々しい躍動感が表現出来ています。さぞかし楽しい学生生活を送られているのでしょう。絵が今にも動き出しそうな構図が、テーマにマッチしていると思います。絵の中からドイツ語の話し声も聞こえてきました。
●中学生の部/「ロンドンの街角」
中田 愛子 14歳 (イギリス)
ロンドンの空気が伝わってきました。地下鉄、テムズ川、二階建てバス、そしてビッグ・ベン。旅行者とは違った不安感を感じることが出来ます。イメージを小さな画面にコラージュすることによって、日常の時間の重なりを実感することが出来ました。学生生活も是非、絵にしてみて下さいね。
●中学生の部/「ウィーン」
三宅 絵美香 14歳 (オーストリア)
ウィーンという街は、この絵に描かれたように、掌に乗せてしまいたい程の魅力ある美しさを持っていますね。整然とした街並の素晴らしさは、毎日眺めている人にとったら、こんなに愛くるしい表情を見せてくれるのでしょう。力強い線のタッチが、現実の姿の凛々しさも伝えてくれて、私もかつて通りを歩いた頃の建物を見上げた記憶が蘇りました。
●小学生の部/「砂漠の猫」
山田 真子 12歳 (UAE)
猫の表情がよく描けています。砂漠には、なぜかヒマそうな猫や犬が似合っているなあと、私も旅先で感じたことがありました。砂漠の猫ってゆったり、のっそりとしています。そんな猫を描くことによって、砂漠の時間の止まってしまったような日常を表現出来たのだと感心しました。この視点は、生活者ならではの表現だと思います。2頭のラクダも好きでした。
●小学生の部/「地中海の夕日」
ルイス・ミゲール・イトゥライン・ハツダ 10歳 (スペイン)
地中海の夕日と海と海岸の色調が素晴らしい。すぐにでも絵の中に飛び込んで一緒に夕日を眺めたくなる気分になりました。夕日が海に沈む時の堂々とした姿は見る者に勇気を与えるものですね。勢いのある筆致が、色使いの豊かさと共に、見飽きることのない普遍的な美しい風景の尊厳を伝えてくれました。見れば見る程、気持ちの良くなる作品です。
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